シニア期に増えてくる慢性腎臓病。
今までの食事から専用の療法食に変更が必要なケースも。
この記事では、腎臓を守る食事管理のポイントを獣医師が解説します。
リンを制限する
腎臓病の進行を遅らせて、「長生きする」ことが分かっています。※1
※1
参考文献:Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs
リンが豊富な食材は、
まぐろ ▶︎ 230mg
ささみ ▶︎ 250mg
ヨーグルト ▶︎ 180mg
プロセスチーズ ▶︎ 230mg
など、タンパク質が豊富な食材に多く含まれるので、おやつやトッピングとして与えすぎないよう注意しましょう。
また、添加物として入っていることがあります。
添加物に使われていても、成分として表記されていない場合もあり、
(→隠しているのではなく使用目的別等でまとめられているだけ)
いずれにしても、“摂りすぎない”ことが大切です◎
おやつの目安は1日に必要なカロリーの10%以内。
愛犬の状態(ステージや症状など)を確認しながら、頻度や量を調整してみてくださいね。
高タンパクを避ける
タンパク質を摂りすぎると腎臓の負担に△
療法食の特徴として、一つは先ほどの「リン制限」、もうひとつが「タンパク制限」です。
タンパク質は筋肉維持に必要ですが、使われた後、老廃物となり身体に溜まります。
腎臓病では老廃物がうまく外に出せなくなるので、療法食は低タンパク設計になっています。
気持ち悪さ・吐き気など腎臓病の症状の軽減や、蛋白尿の改善に役立ちますが、制限しすぎると筋肉量が落ちてしまいます。
ステージや症状に応じて“どのくらいタンパク質が必要か”は異なりますので、定期的にかかりつけ医で体重や筋肉量の変化を確認してもらいましょう。
またお家では、お肉やお魚などのタンパク質をトッピングの範囲を超えて与えていないか確認してみてくださいね。
塩分は程々に
摂りすぎは心臓や腎臓の負担に△
特に、腎臓病のワンちゃんは心臓にも影響を与えることがありますので、余計な塩分は足さないようにしましょう。
塩分が高めな食材の一例↓
食パン ▶︎ 190mg
プロセスチーズ ▶︎ 350mg
練り物(かまぼこ・魚肉ソーセージなど) ▶︎ 510mg
煮干し ▶︎ 570mg
煮干しは塩分が特に高いので、犬用・人用関係なく与えすぎないようご注意ください。
便秘対策をする
腎臓病のワンちゃんは脱水や腸内環境の悪化から、便秘になることも△
適度な運動で腸を刺激したり、トッピングで繊維質を意識するのもGOOD。
特に、水溶性食物繊維はお腹の環境を整えてくれる働きが期待されているので、水溶性の繊維が豊富なお野菜や果物を活用するのもおすすめです。
※カリウム制限が必要な場合は、かかりつけ医とご相談の上、摂取量を調整したり、茹でこぼし調理でカリウムを減らしてご活用ください。
水分を意識する
腎臓病の子は脱水しやすいので、意識してお水を摂ってもらうことが大切。
そのため、いつでも新鮮なお水を飲めるように配慮する必要があります。
また、ウェットフードは、ドライフードに比べて水分を多く含むため水分補給につながります。
嗜好性アップも期待できるので、ぜひご活用ください。
まとめ
よく、“腎臓病の子には、どんな食材がおすすめですか?”と聞いていただくことがあります。
大切なワンちゃんなので、身体にいいものを少しでも取り入れたい!という気持ちは痛いほどわかります…。
ただ、まずは何かを新しく摂るよりも、今の食事で“過剰”なものはないか見直すことが大切です。
腎臓病だからと言って、全部のおやつや食材が食べられなくなるわけではありません。
愛犬の様子を見ながら、量や頻度を“調整する”ことが必要になります。
極端な情報に振り回されずに済むよう、腎臓病の食事管理では何が大切なのか、摂りすぎ注意な食材やおやつはあるのかなど、この投稿を参考にしていただければ幸いです。